妊娠中に行なう検査vol.11〜間接クームステスト

妊娠中に行う血液検査の一つに「間接クームステスト」という検査があります。
ちょっと、難しい話になりますが・・・
この検査は、妊婦さんの血液中に、不規則抗体という、ある赤血球抗原に対する抗体を持っていないかどうかを調べます。つまり、妊婦さんの抗体が赤ちゃんの赤血球を攻撃することがないかどうかを調べます。

一般に知られている血液型にABO型がありますね。赤血球にはA抗原、B抗原とういう抗原が生まれつき存在していて、血漿(清)中には、その人の赤血球に存在しない抗原に対する自然抗体(規則抗体)が存在します。
A型の人は抗B抗体があり、B型の人は抗A抗体があり、O型の人は抗A,抗B抗体の両方があり、AB型の人は抗Aも抗B抗体もない、これがABO型と言われる血液型です。

ABO型以外にも、血液型系として、Rh式血液型をはじめとして約30種類あり、もっと詳しく分類すれば400種余り(!)あるそうです。通常のRh式血液型の検査では最も抗原性の強い(抗体を作りやすい)D抗原を検査しRh陽性(+)、陰性(−)を判定しています。
これらの血液型抗原に対する抗体は、ほとんどの人が生まれつき持ってはいませんが、輸血や妊娠などで他の人の血液が体内に入ると、その血液に反応して抗体を新たに作ってしまうことがあります。これが不規則抗体です。
不規則抗体は生まれつき自然にもっている場合(IgM型)と、輸血や妊娠で免疫されて作られる)場合(IgG型)があり、その不規則抗体検出率は約0.15〜1.3%に認められます。このIgG抗体は、胎盤を通して赤ちゃんに移行します。
また、出産のときに、万が一輸血が必要になった場合にも、輸血した赤血球が不規則抗体によって破壊され副作用を起こす場合がありますので、間接クームステストを行います。ですから、妊娠中に前もって検査しておくと、よりスムーズに輸血することができます。

不規則抗体がある場合には…

不規則抗体がある場合はその抗体が、どの種類の血液型に反応するのかを詳しく調べる検査を行います。
Rh(D)マイナスの妊婦さんの場合には、抗体の産生を予防することのできる注射薬を出産後に打ちます。
Rh(D)プラスの妊婦さんの場合には、出産後に赤ちゃんの黄疸が少し強くなる程度で、特に問題にならないことがほとんどです。

万が一、赤ちゃん(胎児)の赤血球がママの不規則抗体に対応する抗原を持っている場合には、胎盤を通して赤ちゃんの体に入った不規則抗体が、赤ちゃんの赤血球が破壊し、赤ちゃんが貧血になってしまいます。

ですから、妊婦さんの不規則抗体の量を定期的に測り、抗体の量が多くなってきた場合には、羊水検査で羊水中のビリルビン値を調べるなど、赤ちゃんの貧血の度合いを調べます。赤ちゃんがある程度大きくなって、貧血がどうしようもなくなった場合は、早めに帝王切開で外に出してあげることもあります。