妊娠中に行なう検査vol.5〜風疹抗体

妊娠と風疹

妊娠初期に、風疹にかかると、胎児感染により白内障緑内障などの眼の症状、先天性の心疾患、感音性難聴などの症状が表われる先天性風疹症候群(CRS:congenitalrubella syndrome)を引き起こすことがあります。
風疹の症状は、発疹や発熱、頸部リンパ節腫脹などがあります。
CRS発症のリスクは、妊娠4〜6週では100%、7〜12週では80%、13〜16週では45〜50%、17〜20週では6%、20週以降では0%という報告があります。
最終月経前の発症の場合は、CRSは見られていません。不顕性感染(症状は顕れないけれど感染している)が15%程度あると考えられており、不顕性感染でもCRSは発症します。また、抗体測定歴やワクチン接種歴があっても、再感染によるCRSはまれに生じます。

CRSの予防策

女性は、妊娠する前に風疹のワクチン接種を行い、免疫を獲得しておくことをお勧めします

  • 妊娠のなるべく早い時期に、風疹HI抗体価を測定する。(ほとんど全ての産婦人科で、妊娠初期の検査の一つとして行なわれています。)
    1. 抗体陰性または抗体価の低い(HI抗体価16倍以下)妊婦さんは、人ごみや子どもの多い場所を避け、同居家族への風疹ワクチン接種をすることをお勧めします。また、産後に風疹ワクチン接種を受けましょう。
    2. 抗体価は年ごとにだんだんと低下するものなので、抗体測定歴やワクチン歴がある妊婦に対しても抗体を測定した方が良いです。
  • HI抗体価が256倍以上の場合に高いと判断されますが、HI抗体価は個人差があり、感染後早期でなくても1024倍以上を示すこともあります。したがって、HI抗体価が高くても、すぐに最近の風疹罹患であるとは判断できません。HI抗体価が256倍以上の場合も、1〜2週間後に再検査し、IgM抗体価を同時に測定して判定します。
  • IgM抗体は、初感染後4日間で全例陽性となり、1〜2週間後にピークとなり、数ヶ月で陰性化します。