妊娠中に行なう検査vol.6〜トキソプラズマ

トキソプラズマとは?

トキソプラズマとは、ネコを終宿主とする人畜共通感染性の細胞内寄生性原虫です。ヒトからヒトへ感染することはありませんが、土やネコの糞、加熱不十分なお肉(レアステーキ、レバ刺し、馬刺し・・・など)を介して、経口感染します。
健康な成人がトキソプラズマに感染しても、ほとんどは無症状のままか、症状が出たとしても、数週間の軽い風邪のようなもので終わってしまいます。
しかし、妊娠中に感染してしまうと、約30%が胎盤を介して赤ちゃん(胎児)に感染し、数%〜数十%に典型的な新生児の先天性トキソプラズマ症状(顕性感染:水頭症、小頭症、脳内石灰化、網脈絡膜炎、失明、てんかん、精神運動発達遅延、血小板減少に伴う点状出血、貧血など)を発症します。出生時に症状がなかった場合でも、成人になるまでに網脈絡膜炎やIQ低下、適応不全、神経症状(てんかん様発作、痙攣など)等がみられたという報告もあります。
トキソプラズマ胎内感染の実態は不明であるのが実状ですが、都市圏での頻度から少なく見積もって約0.05%(年間約600人)の発症と推定されています。

トキソプラズマの予防策

  1. 食用肉はよく火を通して調理すること、
  2. 果物や野菜は食べる前によく洗うこと、
  3. 食用肉や野菜などに触れたあとは、温水でよく手を洗うこと、
  4. ガーデニングや畑仕事などでは手袋を着用すること、
  5. 動物の糞尿の処理時は手袋を着用すること、
  6. 妊娠初期から予防や抗体検査につとめること、などをあげています。

トキソプラズマの治療

検査の結果、感染が妊娠前からと考えられた場合には、先天性トキソプラズマ症は発症しません。妊婦さんが初感染の場合、胎児への感染率は妊娠8週では2%程度、妊娠後期には81%にまで上昇するとされ、妊娠時期に大きく影響を受けます。しかし、先天性トキソプラズマ症の症状の出現は、妊娠初期の感染であるほど、重症になるリスクが高くなります。
妊娠後にママがトキソプラズマに初感染した場合は、アセチルスピラマイシンというお薬を極力早期から服用開始します。(早期から服用することによって、約60%の垂直感染を予防する効果がある報告されています)ただし、羊水検査によって、胎内感染の診断が確定している場合には効果ありません。
胎児感染が確認された場合には、ファンシダール(1錠/日)というお薬を、赤ちゃんの症状の重症化を予防するために使用していくことがあります。