妊娠中に行なう検査vol.8〜B型肝炎

(社)日本助産師会による助産所業務ガイドラインで、B型肝炎ウイルスキャリアの妊産婦さんをお預かりすることはできないとされています。

「2007年1月16日付け雇児母発第0116001号」で、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長より各都道府県母子保健主管部長宛てに「妊婦健診において妊娠8週前後のHBs抗原検査は最低限必要な検査」であるとの見解が通知されました。

というわけで、全ての妊婦さんにB型肝炎の感染の調べる検査(採血して行う検査です。)が勧められています。もし、妊婦さんがB型肝炎ウイルス(以下HBVとします。)キャリアの場合に、何も感染予防策をとらず放置すると、赤ちゃんの約30%がHBVキャリアとなるとされています。
HBVの抗原検査には、HBs抗原とHBe抗原との2種類があり、HBe抗原が陽性である方が、血中のウイルス量が多く、感染力が強いことを示します。つまり、HBe抗原陽性の妊婦さんから生まれた赤ちゃんがキャリアになる確率は80〜90%と高くなります。
一方、HBs抗原陽性としてもHBe抗原が陰性の妊婦さんから生まれた赤ちゃんがキャリアになる確率はとても低いのですが、10%程度に一過性の感染が起こり、急性肝炎や劇症肝炎になることがあります。
HBs抗原陽性の妊婦さんは全体の約1%とされています。そのうち、HBe抗原が陽性の妊婦さんの割合は約25%とされています。母子感染はたいていが出産のときに起きますが、お腹の中に赤ちゃんがいるときに起きることもあります。出産のときの感染は、感染防止策をとることによって防ぐことができますが、お腹の中にいるときの感染の場合は、赤ちゃんのキャリア化を防ぐことはできません。母乳に関しては、母乳でもミルクでもキャリア化に差が認められていないので、母乳栄養を禁止する必要はないとされています。

現在の「B型肝炎母児感染防止対策」はHBs抗原陽性の妊婦さんから出生した全ての赤ちゃんが対象となっています。

  1. 出生直後(できるだけ早く)、遅くとも48時間以内に、抗HBsヒト免疫グロブリン1.0mlの筋肉注射を赤ちゃんにする。
  2. 生後1ヶ月にHBs抗原検査を行なう。要セ氏であれば胎内感染と診断し、これ以後のグロブリンやワクチンの投与は行なわない。
  3. 生後2ヶ月に抗HBsヒト免疫グロブリン1.0mlを赤ちゃんに筋肉注射する。また、B型肝炎ワクチン0.25mlを皮下注射する。
  4. 生後3,5ヶ月にB型肝炎ワクチン0.25mlを皮下注射する。
  5. 生後6ヶ月に赤ちゃんのHBs抗原検査、HBs抗体検査を行なう。HBs抗原陽性となった場合には予防措置が成功しなかったと判断し、以後のワクチン接種は行なわない。HBs抗体陽性であれば、予防措置は成功したと考えてよい。抗体が陰性もしくは低い値の場合には、ワクチンの追加接種などを行なう。